2016年7月2日土曜日
英語を苦手とする学生たちを教え始めたとき、この点に大いに頭を悩ませました。そして、それこそ懸命にあれこれと試行錯誤してみました。その結果、「ほぼ100%うまくいく」と確信を持てる素材にたどり着くことができたのですが、それが映画や洋楽でした。
素材にこだわる!
さて、文法の発想を変えるとして、つぎに重要なのは素材です。学習者によっては、どのような素材を使っても、自らそこに面白さを発見して前向きに取り組んでいく人もいますが、どちらかというとそれは少数派で、大半の人は素材を「つまらない」(面白くない)と感じます。つまり、「英語以前」のところでつまずいてしまうのです。
これは、ある意味でとても素直な感覚で、実際問題として世の中にはつまらない内容の素材が結構あります。また、たとえば、いくら基礎からやり直すと言っても、大学生や社会人にたいして中学の教科書を使おうとすると、気分が萎えてやる気が起こらないという事も十分に有り得ます(※)。
(※)実は、この点については、大学生や社会人に限らず、高校生たちもとても鋭敏な感覚を持っていて、つまらない英文を即座に見抜きます。彼らの大半は、問題集・教科書の英文や文法書の例文を面白いとは思っていません。
私も、英語を苦手とする学生たちを教え始めたとき、この点に大いに頭を悩ませました。そして、それこそ懸命にあれこれと試行錯誤してみました。その結果、「ほぼ100%うまくいく」と確信を持てる素材にたどり着くことができたのですが、それが映画や洋楽でした。
これは本当に不思議なもので、たとえばUSAフォー・アフリカの「We are the world」などを素材として扱うと、内容も文法もかなり高度ですが、普通なら授業が始まって3分で寝てしまうような学生が目をランランと輝かせて懸命についてきます。また、質問を振っても、何とかして答えようとします。
そこで、今回は映画の主題歌を使って、文法の中でも難解でかつ解説が不十分になりがちな文法ポイント「仮定法」の“肝”の部分を、シンプルに説明したいと思います。
アルマゲドンで英語を斬る!
素材は、映画「アルマゲドン」の主題歌の「I don't wanna miss a thing」です。好き嫌いはあるでしょうが、取りあえず出だしの歌詞は次のようになっています。
I could stay awake just to hear you breathing.
Watch you smile while you are sleeping while you're away and dreaming.
この英文はたった2行ですが、重要な文法ポイントがいくつも含まれています。今回は1行目の英文を使って解説したいと思います――と言っても、不思議に思う人もいるかも知れません。どこにも“If”がないからです。
どうして無いかと言うと、実は一般に言われる「仮定法」というのは、いわば枝葉末節の部分で、本当に重要な点は他にあるからです。そこを理解すると、英語の本質に関わる、より大きく深い枠組みの中で、無理なく仮定法を理解し、使えるようになれます。
では、早速つぎの英文の意味を「受け取って」見ましょう。分かりやすいように、まず「意味の塊」で区切っておきます。
I could stay awake / <just> to hear you breathing.
(※)stay awake:起きたままでいる breathe:息をする(ここでは「寝息をする」)
justを< >に入れているのは、to hearをクリアーにつかむためです。to形(不定詞)の意味については過去のコラム「スピーキングが英語を変える」を参照して下さい。
ヒントとしては、過去形にはつぎの2つの意味があるという点を押さえて下さい(これについては過去のコラム「中学英語で英会話は十分にできる」を参照して下さい)。
①「過去」を表す=「~した」(時間の過去形)
②「想像」を表す=「想像しているだけのことだけど~」(想像の過去形)
(※)②については、「今想像した」の方が分かりやすいという人はそれでも構いませんが、あくまでも「今想像している」です。詳しくは拙著「英語がスラスラ分かるようになる魔法の本」を参照して下さい。
①の意味は容易に分かりますね。②の意味については、「これは、今私が心の中で想像しているだけなのですが…」という前振りを入れて考えるようにすると、うまく理解することができます。
さて、ではこの英文のcouldはどちらの意味でしょうか――正解は②です。
この文章は、若者が恋人に対する想いを語っている言葉で、直訳すると「(これは今僕が心の中で想像しているだけのことだけど)僕は君が寝息をしているのを聴くだけのためにずっと起きていることだってできる」になります。
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